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最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)308号 判決 1968年11月05日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人細木歳男の上告理由第一、二点について。

民法五六五条にいう「数量ヲ指示シテ売買」とは当事者において目的物が実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買を指称するものであるとするのが当裁判所の判例(当裁判所第三小法廷判決昭和四一年(オ)第七七〇号同四三年八月二〇日)とするところ、本件売買に当り、当事者双方とも、本件土地の面積は一九六、二坪あると考えており、仮契約書、公正証書にも右坪数が表示されていたことは所論のとおりであるとしても、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)は、判示のごとき事実関係、とくに本件売買は、上告人が旅館建築に適当な敷地として約二〇〇坪の土地を物色し、当事者双方が交渉して成立したものであり、その際、当事者双方は、本件土地の実状をつぶさに調査し、正確な図面をも参酌して締結したものであつて、上告人がその坪数を重視したのは、代金算出の基礎とする趣旨でなく、買受後の使用目的である旅館建築に相当かどうかの点からであつたという事情を認定しているのであり、原判決の右認定は、挙示の証拠に照らし、これを肯認することができる。されば、本件売買はいわゆる数量を指示してされたものとはいえないとした原判決の判断は、さきに説示したところに照らし、当審も、正当として、これを是認する。

原判決には、所論のような違法はない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)

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